2020/07/27 (MON)

チャプレンより聖書のことば

また、別のたとえをお話になった。「天の国はパン種に似ている。女がこれを取って三サトンの粉に混ぜると、やがて全体が膨れる。」
(マタイによる福音書13章33節)

立教新座中学校・高等学校チャプレン ベレク・スミス
マタイによる福音書13章に書かれているイエスの教えでは、いくつもの「天の国」に関するたとえが残されています。その中でもパン種の話はよく知られている方です。古代イスラエルの敬虔なユダヤ教徒は、年に一回、貴重なパン種を1週間使わずにパンを作りました。紀元前1500年頃にモーセによってイスラエルの民がエジプトの奴隷状態から救い出されたことを記念する「過越(すぎこ)しの祭り」という祭りがありました。その時には古いパン種を捨てて新しいパン種を使用します。イエスはパン種の話をすることによって、天の国と過越しの祭りを結びつけています。そして、自分のパン種は過越しの祭りのあとにくる新しいパン種のようであるという意味合いも含まれています。

パン種は、小さなものが大きなパン生地全体に広がってその性質を変えるものです。イエスの働きは彼と12人の弟子たちを中心に始めたものです。パン種はイエスが残した教会のことであり、パン生地は世界の人々を表します。イエスが古代のユダヤ人たちに示した「天の国」は全世界の人々を含む国でした。これは、当時のユダヤ人たちの多くの考え方と異なる考え方です。「天の国」はエルサレムを中心とした新しいイスラエル王国であると考えていたユダヤ人が多かったからです。それに対して、イエスが伝えた「天の国」はどの人種も文化も含むものであります。そのため、キリスト教の教会は全世界に広がらなければならないものとしてイエスが建てています。それは、戦争や権力で全世界を変えるのではなく、パン種のように、自然に全てに充満して性質を変えていくものです。

古代の宗教は基本的には地域限定、そしてある言語や民族に限定された宗教です。しかし、キリスト教はユダヤ教に続いて、世界の全てを創造した一つの神を信じているがゆえに、罪からの救いも天国なども、拝むべき神も全ての人間にとって一つなのです。イエスはモーセの申命記の言葉を借りて第一の掟を定めています。「第一の掟は、これである。『イスラエルよ、聞け、わたしたちの神である主は、唯一の主である。心を尽くし、精神を尽くし、思いを尽くし、力を尽くして、あなたの神である主を愛しなさい』」(マルコによる福音書12章29-30節)。私が「天の国」のことを考えるときにいつも思い浮かぶ質問があります。それは、イエスが教えたような民族や文化を越えた全世界に広がるものがなければ、全世界の人々が同じく平和と正義を求めることができるのでしょうか?

2020年7月27日

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