2022/05/16 (MON)

チャプレンより聖書のことば

「あなたがたに新しい掟を与える。互いに愛し合いなさい。わたしがあなたがたを愛したように、あなたがたも互いに愛し合いなさい。」
(ヨハネによる福音書第13章34節)

立教新座中学校・高等学校チャプレン 倉澤一太郎
1956年製作のアメリカ映画『十戒』は旧約聖書の出エジプト記を題材に、主役のモーセをチャールトン・ヘストンが、敵役のラメセス王をユル・ブリンナーが務めたスぺクタクル史劇です。クライマックスとなる紅海の海面が割れてイスラエルの民が干上がった海の道を進む特撮シーンは翌1957年のアカデミー特殊効果賞に選出されるだけでなく、後に作られたアニメ作品等で手本にされるほどの衝撃を視聴者に与えており、私自身も子どもの頃にテレビ放映された際に観て、画面に釘付けになった記憶が思い起こされます。ですが、この映画の肝は衝撃的な特撮シーンではなく、題名が示す通り神からの「十戒」の授与にあります。映画の物語の大半を占めるモーセの生涯の物語も、大掛かりな舞台装置や多数のエキストラを動員して生み出されたスペクタクルシーンも、すべてはイスラエルの民がいかにして神の民となったのかを語るための過程であり、視聴者の耳目を集める小道具に過ぎないはずなのに、私たちは主題よりも小道具の方に心を奪われてしまいがちです。

十戒、それは神から人に対して授けられた、人が神と人との間に良い関係を築き、交わっていくための心得であり、良好な関係を保つために注意すべき事項が具体的に示されたものです。これを守らないと神と人との関係性が、また人と人との関係性が破壊されて修復不可能になるから注意しなさいという項目が実に十のうち九つも示されています。残る一つが安息日を守る、すなわち休みをとるということで、私の知る限り人に休めと言われた神は聖書の神だけだと思います。神は人間が十分に活動するためには休みが必要であるということをよくお分かりで、掟として示さないと無理をして身を滅ぼす者が必ず出ると危惧されたのでしょう。十戒が示す守るべき掟は、現代の私たちにおいても良好な人間関係を築いて暮らす上で無視できないと言えますが、残念ながら十戒の後に記された沢山のより具体的な実践方法=律法の項目のために、古代の人びとはそれらを覚えて守ることに心を砕き、神が望まれた最重要ポイントである良好な関係の構築は後回しにしてしまったようです。イエスは律法=掟の具体例が列挙されることの危険性をよく分かっておられたのでしょう。掟をお定めになるに際して、神が人に求めておられることを「お互いに愛し合いなさい」の唯一言にまとめてくださいました。そのうえで、「わたしがあなたがたを愛したように」と模範にすべき具体例まで教えてくださっています。互いに愛し合うとはどういうことなのか、私たちが実践していくうえで模範にすべき行動を、既にご自身で弟子たちに見せてくださっていたことを、改めて教えてくださったのです。福音書にはイエスが語られたこと、為さったことが記されており、現代の私たちもイエスを模範とすることが十分に可能です。

2022年5月16日

お使いのブラウザ「Internet Explorer」は閲覧推奨環境ではありません。


ウェブサイトが正しく表示されない、動作しない等の現象が起こる場合がありますのであらかじめご了承ください。
ChromeまたはEdgeブラウザのご利用をおすすめいたします。