2022/06/27 (MON)

チャプレンより聖書のことば

イエスは、別のたとえを持ち出して、彼らに言われた。「天の国はからし種に似ている。人がこれを取って畑に蒔けば、どんな種よりも小さいのに、成長するとどの野菜よりも大きくなり、空の鳥が来て枝に巣を作るほどの木になる。」
また、別のたとえをお話しになった。「天の国はパン種に似ている。女がこれを取って三サトンの粉に混ぜると、やがて全体が膨れる。」
(マタイによる福音書第13章31~33節)

立教新座中学校・高等学校チャプレン 倉澤一太郎
からし種は地中海沿岸が原産のクロガラシやシロガラシの種子のことで、先史時代からスパイスとして利用されており、メソポタミアの料理のレシピを記録した粘土板文書には数多く登場するなど、辛味による食欲増進効果で人びとの健康維持に大きな役目を担っていたことが伺えます。また、健胃・去痰・鎮咳や筋肉痛の薬としても用いられ、貧しい人びとにとっては重宝される家庭薬でした。というのも、からし種は元々が野草なので特に手をかける必要がなく、家や畑の周囲に蒔いておけば勝手に成長してくれたので、収穫さえすれば日常的に利用できたからです。からし種は自分たちの身近に在って日常生活を豊かにしてくれる頼もしいモノの代表であり、神様からのお恵みと感じていたことでしょう。また、パン種も日々の生活に不可欠なモノです。当時のパン種はスープの残り等で小麦粉に混ぜて天然酵母を培養するもので、現在のサワー種やルヴァン種と呼ばれている酵母の元祖です。最初期のパンは小麦粉と水を捏ねたパン生地を発酵させることなく焼いていたようですが、古代エジプトで前の日に焼かずに放置した生地が発酵、膨れた生地を焼いてみたら美味しかったことからパン生地を発酵させることが広まったそうです。一説には膨れた生地を見て最初は悪霊の仕業と騒いだそうですが、美味しかったことから一転して神の恵みとされるようになったようで、パン種も人の日常生活には不可欠な神の恵みと受け止められていたと言えるでしょう。

イエスが天の国をからし種やパン種に譬えられたのは、それが当時の人びとの日常生活において極めて身近であり、かつ不可欠なモノだとされていたからでしょう。これらがあることによって日々の生活が豊かなものになり、愛する家族が健康な生活を送る上での基となる日々の食事を分かち合い、笑顔で楽しみ合うことが可能になる、そのことを表現されたかったのではと考えます。イエスが語る神のみ言葉を私たちが受け入れて素直に実行することができたその瞬間、そこに天の国が現れ始めます。地に蒔かれたからし種が勝手に大きく育つように、またパン種が混ぜ込まれたパン生地を勝手に膨らませるように、神のみ言葉は人が受け入れさえすれば天の国を出現させ、成長させる力を秘めています。そして天の国は別世界の話ではなく、私たちが生きるこの世界の話なのです。イエスは私たちがその気になれば天国を出現させることが可能であることを教えておられます。私たちの生きる世界から地獄を滅ぼし、天国を作るのは私たちです。

2022年6月27日

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